日野のまちはどこからきて、どこへ向かうのか=GSEF 2018 スペイン・ビルバオ大会 エントリー用レポート

  本レポートは、2018年10月にスペインのビルバオ市で開催される「グローバル社会経済フォーラム―GSE2018」 の日本実行委員会からの要請を受けて作成したレポ-トを要約したものです。 大会のテーマは「社会経済と都市ー包括的かつ持続可能な地域開発の価値と競争力」です。 やまぼうしが日野市との関係でどのように 共生・共創のまちづくりに取り組んできたのか、今後の課題・目標は何かを、この機に考えていきたいと思っています。


 GSEF 2018 スペイン・ビルバオ大会 エントリー用レポート

                           認定NPO法人 やまぼうし  理事長 伊藤 勲

          私達は東京都日野市で
〝コミュニテイ政策における「公民協働」を模索”し、「共生・共創のまちづくり」への挑戦を重ねてき 
 ました。
NPO法人「やまぼうし」のミッションは、“豊かな自然と人の共生関係を回復し、誰もが安心して暮らし、支え合える地域社会を共に創る!”=「共生・共創のまちづくり」です。
             私達の合言葉は 「鳥は空に、魚は海に、人は社会に!」

  1.東京都日野市のまちのプロフィール・原風景

  ①人口は19万人弱。東京駅から電車で1時間弱。緑と清流が豊かで、農あるまちであり「自然と人
    との共生」「ライフ&ワークバランス」をどう実現するかが、一貫したこのまちのテーマとなっ
   ています。
  ②第2次大戦前から工業団地がありそのベットタウンのまちでしたが、近年は「産業の空洞化」と「超高齢化社会の到来」が急展開し、持続可能な社会づくりのための「まちのデザイン」の再設計
    が急務となっていました。
  ③他方、歴史的な経過により、障害者施設が多く集まるまちとなり、「収容型福祉施設」を中心と
    した「福祉のまち」でした。私達は1970年代から「施設改革」と「脱施設」の模索を開始
    し、「恩恵としての福祉」から「権利としての福祉へ」を古くて新しい課題としてきました。
  ④1970年代から都心大学の「郊外移転」が進められ日野市及び周辺に10を超える大学が集中
    しました。しかし、2000年代からは、逆に「大学の都心回帰」の動きが進んでいます。郊外
    大学の存在価値を発揮することが日野市と大学の共通課題となっています。

2.高度経済成長の終焉と新たな市民運動の登場・公民協働の時代へ転換

①1970年代、環境問題が深刻化した日野市に「環境基本条例」制定を求める市民運動が誕生しました。それが、「公民協働を重視する日野市政」への転換をもたらす契機となりました。
②1980年からの「障害者施設の抜本的改革」の時代を経て、「障害者と共に生き、働くまちづくり」へ向かい、日野市における「地域共生社会づくり」は、障害当事者運動と市民運動が結合して幕明けしました。障害者のソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)を本格化させる時代を迎えました。
③1999年、大工場の撤退・移転による急激な税収減で日野市は「財政非常事態宣言」を発しました。それに対して、持続可能な「日野いいプラン2010」策定作業がスタートしました。
④2000年代からの「都市縮小時代」を迎え、郊外型大学での「産官学民連携事業」が活発化
  してきています


3、包摂的で持続可能な地域創成に向けた、日野市の模索

①1990年に結成した「障壁のない地域社会日野を創る会」が「障害者の完全参加と平等」の実現を目指して、、日野市ボランティアセンター等で出会った市民運動の仲間との「市民協働」の場を作りました。そうした仲間と「市民版日野まちづくりマスタープラン」を作成しました。この活動を機に、地方自治体と市民組織が協働する「ローカル・ガバナンス強化」の信頼関係・素地が形成されました。        
②「マスタープラン」は、「生物多様性を認め合うまちづくり」を行政に提案するとともに、それを行政ゆだねるのではなく、市民自治の立場から市民自身が協働して、「まちを耕し、生命が躍動するまちを育てていく」ことを呼びかけました。その結果、日野のまちを、若者、障害を持つ人、高齢者等の「暮らし」を支え、「多様な人間の折り合いを図る場」として位置づける、日野市独自の「公民協働のまちづくり」が進展してきました。
その経過のなかで「障壁のない地域社会日野を創る会」は、2001年に「NPO法人やまぼうし」に発展しました。事業型NPO法人の特性と力量を発揮して、毎年先駆的・開拓的事業を立ち上げ、日野市独自の「公民協働」を軸とした自治体改革が大きく前進してきました。
④市民の提案と実践の積み重ねは「日野市障害者プラン」に順次反映され、そのことを「やまぼうし」は中心的に担いました。

       「障害者保健福祉ひの5か年プラン」(2005年~2009年)で定めた
                                   「3つの基本的視点」
  1)障害のある市民が社会参加の主体となるよう、「保護」から「支援」へと施策の転換を図
    る。

  2)障害のある市民を生涯にわたって継続的に支援できるよう、安全・安心のシステムをつく
    る。

  3)障害のある市民と一般市民、企業市民、NPOなどが力を合わせ、共生社会をつくる。

障害者保健福祉ひの6か年プラン」(2010~2015)の
                            「基本目標」
 障害者が「生活保護依存ではない、所得保障の可能性を追及する」ことを「日野市全体の協働の仕組みで支え」、「共に生きるまち日野」をつくると宣言しました。

4、「日野市2020年プラン」の実現と「生活価値 共創都市づくり」への
                           やまぼうしの 重点課題

「重度障害者を排除しない地域共生社会」の創出にむけ、実効性のある自治体政策の実施とそれを 可能とする「公民協働」事業を推進する。
    ②事業型NPOの特性を生かし「日野市型ローカル・イノベーション」(新た
   な働きやすい地域環境の育成)推進事業を「多摩平地区」「平山台地区」「高 
   幡台地区」を重点に「ソーシャルビジネスの創造」を軸に取り組む。

③廃校小学校・空き商店・遊休農地等の「地域社会資源の再生」を図り、「多世代交流型のコミュニテイ事業拠点」の形成に取り組むとともに、「暮らしを支える仕事づくり」と「共生社会に向けた芸術・文化構築」のプロジェクトを立ち上げる。
  ④空き屋・アパートや老朽化団地を再生活用し、施設型でない「障害者・高齢 
   者・若者の共生型居住空間」(相互の自立と依存関係)を創出し、「くらし 
   のパートナー」を育成する。
  ⑤「多様なコミュニテイ・レストラン」を活用し、オーガニック食材・地場食
   材の積極利用を図り、「ブランド価値のある食の提供」をスローワールド事 
   業の重点課題とし、商品開発・販路拡充に取り組む。
  ⑥地元大学をベースに、「産官学民のプラット・ホームを形成」し、「実践  
   知」の深化による「アドボカシー(市民による政策提言)」「社会的企業 
   と地域通貨創設を視野に入れた価値創造」の実践的研究活動を進める。

コメント

  1. ご無沙汰しております。その節は、理事長並びに事務長まで面接頂きありがとうございました。やまぼうしの賛助会員にさせて頂きました。出来上がった映画(DVD)を歴史と共にぜひとも拝見させて頂きたくメール致しました。台風の影響などで、お忙しいとは思いますが、連絡お待ちしております。

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