全国よい仕事研究交流集会に寄せて


  ワーカーズ・コープ 全国よい仕事研究交流集会 2018に寄せて



 「生きる場を再構築するために労働を創造する」ことを模索しあう

                    認定NPO法人 やまぼうし 伊藤 勲

1、基調提起を受けて

 大会初日の基調提起で、「よい仕事をいのちの本質から考える」ことが掲げられた。その意味は大きい。「働き方改革」が焦点になっている中で、「一般労働市場での雇用労働」での「格差と貧困の拡大」を超克するために、「協同労働のよい仕事づくり」を進化させ「新たな労働モデル」として定着・拡大していくことが求められている。改めて「協同労働」とは何かを「労働・仕事」の本質からとらえ直すこと、「共生社会」の実現に向けて「協同」「共同」「共働」「協働」の概念整理を深めることは、私自身の「実践知」探求の課題でもある。

2、内山節氏講演のインパクト

 「共に生きる世界―いのちと社会を結んでー」と題しての記念講演は、感動的であった。

 内山氏は、近代以前の「過去」から未来へのヒントをもらうとして、「自然と人間、人間と人間が結び合って生きていた社会」を再評価し、未来への模索としての「伝統回帰」とその為に新しい方法を構想しようと呼びかけられた。全国の過疎化の進む農漁村で「ソーシャル・ビジネス」が「結び合う世界」の復興を促し、『共に生きる場づくり』の基盤となる「地域連帯経済」を創り出すための道筋を探る上で、示唆に富んだ提案である。

 実は、2005年2月に八王子労政会館で、多摩地区の小規模作業所改革に取り組んできた仲間と「内山節さんを囲んで 働く(労働)を考える学習会」を開催した。「そもそも,人間が生きていく上で仕事(労働)とはどういうものか」を考える歴史的過程、社会的背景をお話いただいた。内山氏は、『百姓―多職の民の多様な視点』を中心に、「農民と百姓は全然意味が違う」「農民は農業をする人だが、百姓の姓といういう字はもともと職業を意味する言葉」「百姓というのはいろいろな仕事に携わっている人という意味」とし、「人間=百姓、人間を意味する言葉として始まった」「初めに百姓から逃げていったのは天皇家で、天皇家以外は全て百姓だった」「今の言葉だと庶民という言葉が一番近い」「結局いろんな仕事をしながら生きている人たちという意味だった」と語られたことが印象に残った。内山氏の「多様な働き方」=「多職性の回復」は、やまぼうしのめざす「協働労働」のキーワードとなってきたが、改めて、そのことを再認識させて頂いた。私はそこに、地域社会での「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)と「ワーク・インテグレーション」(労働統合)の原型を見ている。


3、「宇都宮地域福祉事業所」の実践レポートに注目したい
 

 宇都宮事業所は、2006年設立の設立以来幾多の事業にチャレンジを重ねてきた。現在は「きずなの家」(生活困窮者いばしょ事業)と「Hosono lab 」(ふれあいたまり場事業)で社会連帯活動を展開されている。 「きずなの家」は一軒家の事業所で、障がいのある当事者や地域の高齢者のサロン+青少年の居場所事業も併設されている。この活動を通じて、居場所だけでは足りない課題(子どもの貧困や学習問題、高齢者介護の問題などが見つかったとのこと。「発見した地域ニーズ」を解決する事業スキルをどう獲得するかが課題だ。


 もう一つの「Hosono lab 」は、幼稚園だった教育施設の整備管理を兼ねて借り上げ、多彩な活動を展開し、障がいのある人の集える場、働ける場づくりを目指している。その下準備として、森林の整備、実験畑の作付等を通じて、地元の人との出会いが増えてきている。さらに、「地域通貨」の発行、「森の学校」「茶屋」の開業「創作クラブ」等々にもチャレンジしようとしていて、「百姓的仕事づくりの作法」への期待が高まるレポートであった。

4、「地域の総合福祉拠点」づくりへの多面的アプローチの出発点
 初日の感動的な代表レポートをされた宇都宮の森本宏美さんと、1次会でお話できた。近いうちに訪問
させてくことに。 森本さんシェアさせてください。

 15分散会での60本のレポートは、「ワーカーズコープの今」を赤裸々にするもので圧巻であった。それらは、ワーカーズの目指す「地域の総合福祉拠点」づくりの出発点に共に立とうという「想いの共有化」を目指す空気が溢れていた。分散会で個別のコメントをさせていただいたが、全体の課題の更なる整理と問題解決の実践的指針作りは急務であると感じた。

やまぼうしも、「共生・共創のまちづくり」事業を本格化する準備を進めている。今後のワーカーズコープとの「学び合い」「分かち愛」から「サードセクター形成」していくことを期待したい。

 

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